「最初の火種」を自分で持つということ|noteイベントで思い出した、読まれる文章と届けたい文章の間にあるもの
ビルを出ると、朝まで降っていた大雨は嘘みたいに止んでいた。
思わず見上げた空を、大きな飛行機が賑やかな音を立てながら横切っていく。
さっきまで、大好きなPRの方たちと会っていた。
最初は仕事から始まったご縁でありながら、今では会うたび話が止まらない存在だ。
人生のいろいろな局面をくぐり抜けつつ、家族との時間も大切にしながら、いつも仕事にもまっすぐ向き合っている姿。
「これを届けたい」という気持ちを、自分の言葉でちゃんと持っているところ。
尊敬し、そして共感もしてきた。
この日聞いたのは、ある温泉地の挑戦の話や、新しい化粧品ブランドの開発背景。
どちらも、”商品”というより、誰かの人生や願いが乗っているような話で、気づけば私も熱くなっていた。
あっという間に過ぎた時間が名残惜しくて、
電車に乗るという彼女が地下の改札へ向かう道を歩きながら、最後までしゃべっていた。
「ああ、私はやっぱりこういう時に書きたくなるんだな」
いつもよりゆっくり階段を上がり、地上へ戻った。
空を横切る飛行機を見送った私は、ポケットからイヤホンを取り出す。
選んだのはiriの『Sparkle』。
次の予定までは少し時間がある。
やっぱり電車じゃなく、歩いて向かおうと思った。
少し走り出したくなるような気持ちだった。

日中の用事を終えた夕暮れ時。
まだ頭のどこかでiriが流れているまま、四ツ谷の『note place』へ向かった。
noteを書くようになってだいぶ経つけれど、イベントへの参加は実はこの日が初めてだった。
テーマは「日常を“作品”にするエッセイの書き方」で、ゲストはエッセイストの長瀬ほのかさん。
なんてことない普通の日や何気ない出来事を、まるで「作品」みたいにしてしまう文章が好きだし、思わず吹き出してしまうようなユーモアにも、いつも惹かれる。
聞き手がいしかわゆきさんというのもまた、ぜいたくだった。
最初は少しピンとしていた空気が、いしかわさんの朗らかな言葉で少しずつほぐれていき、気づけばカフェでお茶をしているみたいな空気になっていた。

エッセイを書く際の構成についてや日々のメモの取り方など、かなり具体的なお話もたくさん聞けた。
でも一番心に残ったのは、テクニックというより、もっと「表現する人の在り方」みたいなものだった。
特に印象的だったのが、長瀬さんの
「読者を共感させたい、とか、こういう感情にしたい、ということはあまり考えたことがない」
という言葉。
言うまでもなく、長瀬さんは読者のことを気にしていないわけではない。
お話を通して、ご自身が伝えたいことがちゃんと伝わるように、表現や描写をとても丁寧に選んでいることが伝わってきた。
自分の頭の中にある景色や感情が、読者の中にもちゃんと広がるような文章を書きたい、 と話されていたのが印象的だった。
長瀬さんはきっと、受け取る読み手の心を操作しようとしていないのだと思う。

私は、人の感情を受け取ることが好きだし、自分の言葉が誰かに届くことも大切にしたい。
”どうすれば読まれるか。共感してもらえるか。”
もちろんそれは、特に仕事として文章を書く以上、真摯に向き合い続けたいことだ。
でもこの日、長瀬さんの話を聞きながら、私はふと、自分の出発点を思い出していた。
「これ、面白いんだよ」
「これ、あなたが好きそうだと思ったんだよね」
まず自分の心が動いて、その熱を誰かに渡したくて書いていた。
駆け出しの頃、私はよく、誰かひとりの顔を思い浮かべながら記事を作っていたけれど、それは原稿設計とか構成などというより、もっと、「手紙」みたいな感覚だった気がする。
気づいたら心を持っていかれている。
私は、そういう文章が好きなのだと思う。

長瀬さんの言葉にも、昼間会っていたPRの方たちにも、共通して惹かれるものがあった。
それは、「言葉」と「生き方」がちゃんと繋がっている感じ。
自分の言葉を、自分で引き受けている方たちだということ。
だから私は、あの日あんなに心を動かされたんだと思う。
「最初の火種は、自分で持っていていい」
あの夜、私はそのことを、久しぶりにちゃんと信じられた気がした。
▼今回参加させていただいたイベント
noteの皆様、長瀬さん、いしかわさん、貴重な時間をありがとうございました!
もくじ
著者プロフィール

「暮らしを支える言葉」を届けたい
書籍編集、企業広報やSNS、HPのライティングなど、
暮らしや人の営みに寄り添うテーマを中心に幅広く執筆しています。
生活者としての実感を大切にしながら、
読み手にとって「少し前向きになれる言葉」を届けることを心がけています。
企画立案から取材・執筆まで一貫して対応可能です。
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