書きたかったのは旅の記事ではなく、「旅から持ち帰ったもの」/長野県・野沢温泉村(LEEweb)
長野県・野沢温泉村を訪れた記事が、LEEwebで公開されました。
野沢温泉といえば、冬のスキーを思い浮かべる方も多いかもしれません。
私もその一人でしたが、今回初めて訪れたグリーンシーズンの野沢温泉には、山菜や新緑、外湯をめぐるゆったりとした時間など、この季節ならではの魅力がたくさんありました。

今回の旅でも、築100年の旅館を改装した素敵な宿や、地元の食材を味わえるレストラン、クラフトジンの蒸留所、山菜採りなど、紹介したい場所や体験はたくさんありました。
けれど、旅を終えて一番心に残っていたのは、村内13か所にある共同浴場「外湯」で過ごした時間でした。

外湯は、地元の方々が「湯仲間」として日々清掃や管理をしながら守り、観光客にも開いてくださっている温泉です。
最初は、村の方が日常的に使う場所に自分が入ってもよいのだろうかと、少し遠慮するような気持ちもありました。
でも実際に入ってみると、排他的な雰囲気はなく、かといって観光客として特別に扱われるわけでもありません。
地元の方と挨拶を交わし、熱いお湯の入り方を教えてもらい、ほんの少しだけ村の日常に混ぜてもらったような感覚が残りました。

当初は、野沢温泉の魅力をなるべくたくさん伝えたいと思っていました。
けれど、旅から戻り、現地での経験を振り返り、構成を練るうちに、観光スポットを網羅することよりも、私が現地で何を感じ、何を持ち帰ったのかを書きたいのだと気づきました。
朝の外湯へ向かう坂道。
畑を眺めながら歩いた時間。
採れたばかりの山菜。
自然にはかなわないから、じたばたしても仕方がないと笑う人たち。
どれも、どちらかというと日常的な風景や出来事。
それでも東京へ戻ってから、何度も思い出しました。
そして最後に出会えたのが、雨の日だけ透明になる「サンカヨウ」。
夢の中のような霧に包まれながら、その日、その天気だったからこそ見られた景色も、この旅を象徴する出来事のように思えました。

原稿を仕上げるまで、かなり迷いました。
もっと短くした方がよいのではないか。
気持ちを書きすぎていないだろうか。
旅の情報として、きちんと役割を果たしているだろうか。
何度も考え、削りましたが、最後まで残したいと思ったのが、こんな一節でした。
コーヒーを淹れる。家族で朝ご飯を食べる。
何かを足そうとするだけではなく、目の前にあるものをちゃんと味わう。
すると、いつもと同じ朝も、少しだけ違って見える。
旅に出るとき、私はいつも、普段とは違う特別なものをどこかで探していた気がします。
でも今回、野沢温泉から持ち帰ったのは、何かを新しく足すことではなく、すでに目の前にあるものを味わう感覚でした。
それを「丁寧な暮らし」と呼ぶのかは、まだよく分かりません。
けれど旅を終えてから、自分の何気ない日常の風景が、より大切に思えるようになりました。

そして、原稿を読んだ現地や関係者の皆さんから
「野沢温泉の温度感や空気まで伝わるような記事で、はる菜さんが現地で見て、感じてくれたことが、記事を通してよく分かりました」
と言っていただけたことも、書き手として本当にうれしい出来事でした。
観光地を紹介するだけではなく、その土地で出会った時間や人の温度まで届けたい。
野沢温泉村で過ごした二日間の記事は、私にとって、改めてそんな気持ちを確かめる一本にもなりました。
もくじ
著者プロフィール

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書籍編集、企業広報やSNS、HPのライティングなど、
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生活者としての実感を大切にしながら、
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