イッタラ取材で触れた言葉に背中を押され、「深く味わうこと」を選びたくなった日/人生の手触りメモ3月

月に一度、その時の自分の感覚や、
ふと心に残った出来事をメモするように綴っていきます。

先日、フィンランド大使館で行われた、イッタラのアアルトベース90周年の発表会を取材した。

フィンランド大使館のある麻布は、幼い頃の思い出が残る場所でもある。
そんな街を抜けて向かった大使館は、入口こそ少し物々しい雰囲気があるものの、一歩中に入ると、北欧らしい静かな美しさが広がる空間だった。
長く愛されるブランドの展示や新作の紹介ももちろん興味深かった。
でも、その日いちばん心に残ったのは、フィンランドから来日したイッタラのクリエイティブディレクター、ヤンニさんのお話だった。

それは、思っていたよりずっと静かで、でもとても力強い言葉だった。

その日、ヤンニさんの口から、アアルトベースの歴史について伺うことができた。
彼女が語っていたのは、イッタラというブランドだけでなく、ヤンニさん自身のものづくりに向き合う姿勢そのものにも通じる「過去を尊重しながら、未来へ向かう」という考え方だった。

アアルトベースは、80年以上前に生まれたデザインで、いまではフィンランドを代表する存在として世界中で愛されている。
しかし実は、今のように高く評価されるまでには、およそ50年という長い時間がかかったのだという。

詳しい経緯は記事の中で書いたが、
アアルトのデザインは、
”芸術品”ではなく、日常の中で使われ、暮らしの中で息づくもの。
今では名作として広く知られる存在だが、最初から評価されていたわけではない。
長い時間の中で、試行錯誤を重ねながら受け継がれ、ようやく今にたどり着いた、ずっと挑戦を続けてきた存在でもあるのだ。

そして、その姿勢を語ってくれたヤンニさんは、長く国際的なラグジュアリーファッションブランドの第一線で活躍してきた人物だ。ファッションの世界からイッタラに加わったという、少し意外な経歴の持ち主でもある。
過去や歴史を尊重しながらも、未来に向け新しい挑戦をし続ける。
そんな彼女の言葉を間近で聞くことができたのは、とても貴重な時間だった。

飛行機から見た空

一緒にするのは大変おこがましいのだけれど、なぜか自分の最近の感覚と重なるものを感じていた。

個人的な発信でも少し触れているのだが、ここ最近、自分の中でフェーズが変わってきているような感覚がある。
南米二か国での怒涛の海外生活を経て本帰国し、子どもたちも中学生と小学校高学年になった。外側の環境が変わったことも大きいのだと思う。

昨年後半から、仕事とは別に昔から挑戦してみたいと思っていたことにも手を付け始めた。
すぐに結果が出るものではなく、むしろ行ったり来たりしながら、うまくいかないことも多い。

以前だったら、もっと早く結果を求めていたと思う。
でも不思議と、今は続けていることそのものが楽しい。

20代や30代の頃は、とにかく日々の中にいろいろなことを詰め込んでいた。
子どもも小さく、海外転勤などで環境も目まぐるしく変わる中で、そうせざるを得ない時期だったし、それはそれで思い出深い。

今も夫だけは海外にいて、相変わらず日々はワンオペで慌ただしい。
それでも以前より、自分のことに目を向けられるようになった。
最近は、

目の前のことを一つひとつ丁寧にやること、
味わうこと、
そして少しだけ余白を持つこと。

そういう時間の中で、深い幸せを感じられるのかもしれない、と感じるようになってきた。

よく聞く言葉だと自分でも思う。
でも、最近ようやくそれが、なんというか腹落ちしてきた気がするのだ。

そんなタイミングで聞いたヤンニさんのお話は、思っていた以上に心に残った。
すぐに結果が見えるものばかりではない。
それでも信じて続けていくことで、少しずつ形になっていくものもある。
その言葉を聞きながら、最近の自分の時間の使い方や、日々の生活のことをふと思い返していた。

家族おそろいで買った腕時計
コロナ禍のさなかに決まった海外転勤。 夫がひと足先に海外へ向かう前、家族4人でお揃いで買った時計。  地球の反対側にいても、同じ時を刻んでいる。 結局家族揃うまで2年かかったけれど、その感覚に、ずっと支えられていました

子育ても、日々の暮らしも、成果がはっきり見えるものばかりではない。
むしろ、目に見えない時間の方が圧倒的に多い。

もちろん子どもは自分の成果物ではないし、何かを評価するものでもない。
それでも、うまくいかないことも含めて、その過程自体が大切な時間なのだと、以前より自然に思えるようになってきた。

その日、大使館を出る頃には、ヤンニさんの言葉が、自分の中で少しだけ静かな確認のように残っていた。

急がなくてもいい。
深く味わうことを選んでいけばいい。

そんなふうに思えた時間だった。

著者プロフィール

ライター 佐々木 はる菜
ライター 佐々木 はる菜
株式会社リクルート等を経て、結婚・出産を機にライターへ。現在は集英社の人気女性誌のwebサイト『LEEweb』でのコラム連載や日本有数のニュースサイト時事通信社「時事ドットコム」 での特集記事など、女性目線・ママ目線に強いライターとして暮らしや子育て、旅、国内外のトレンドから社会的な取り組みまで幅広く執筆。丁寧なリサーチ・取材に基づいた等身大の体験記事、インタビュー記事、実体験をもとにしたコラムに定評があり、企業サイトでのコラムやPR記事、編集業務などにも携わる。著書にkindle「今こそ!フリーランスママ入門」。夫の海外転勤に同行し2022年より家族でブラジル・サンパウロ、その後アルゼンチン・ブエノスアイレスで生活。

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